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ひとくちにおやきと言っても、長野にはたくさんの種類のおやきが存在する。

長野県の郷土食としてよく知られているおやきですが、その製法は焼いたり、蒸したり、はたまた揚げたり、地域によってもずいぶん違うんです。

地域によって「おらがふるさと(長野県の方言で私たちの地元、という意味)のおやき以外はおやきとは認めねぇ!」っていうこだわりも数多。


古くから南北に長い長野県で語り継がれてきたヘリテージフードだからこそ、地域の特色や生活環境によって味や食感が様々なのは仕方のないこと。


せっかく旅で長野県を訪れたのならば、この土地に根付いた郷土食を味わって頂きたい。それぞれの製法に美味しさの違いがあることを知ってから食べてみて頂ければ、きっとおやきの楽しみ方も広がるはず。


そんな、おやきの世界をご紹介します。


代表的な製法は3つ。

まず最初におやきとはなんぞや、という方のために簡単にご説明を。

おやきとは長野県で古くから食べ継がれてきた郷土食。稲作に適さない寒冷な土地では、米に代わり小麦粉やそば粉が多く用いられていました。そんな環境から生まれたおやきは、小麦粉を水で溶いた生地で野沢菜やナス、切干大根などの具材を包んで焼く、もしくは蒸す長野県民のソウルフード。

手軽に作れるおやきは、家庭の味として親しまれてきました。そのため地域や家庭によっても作り方は千差万別です。


その中でも代表的なおやきの製法は3つ。

  • 焼く
  • 蒸かす
  • 焼いてから蒸かす。

大きくはこの3種類に分類されます。


いろりの灰の中につっこんで焼く!?

まず、いろりの灰の中に入れて焼いたのがルーツと言われている焼くタイプ。


その説明だけ聞くと、あつめた落ち葉の中で焼くやきいものように、いろりの灰の中におやきごと埋めてしまうワイルドな感じを想像してしまいますよね。生地のまわりに灰がまとわりついた出来上がりをイメージして「いやいや食べ物でそれはありえないでしょ」って思っていたら、昔は本当にそうやって作っていたらしい。

しかし、時代とともに灰の中で焼くことが衛生上難しいと判断されるようになってきて、現代ではいろりの灰の上に渡し(鉄の網)を置いて、その上で焼かれるようになったんだとか(現在でも、いろりの灰の中で焼く伝統的な製法を用いているところもあるようです)。

いろりでじっくり焼くことで、こんがりと焼き目のついた皮はパリっと、中はパンのようにふっくらするのが特徴。焦げ目の香ばしい香りも、このタイプならではの魅力です。

この灰焼きといわれるタイプのおやきは、ホテルのある白馬エリア周辺、特に隣接する小川村や、松本城で有名な松本市や安曇野市で多く見られます。


小川村にある『小川の庄 縄文おやき村』で食べることができるようです。


蒸したおやきは、ふくらし粉の有無で全くちがった仕上がりに。

で、この灰焼きおやきより少しあとに広まったのが蒸すタイプのおやき。

蒸すことで、焼くおやきに比べて手間が掛からず生産性が向上。おやき発祥とされる山あいの集落から人里、町に伝播されていく過程で発達した製法なんだそう。

このおやきはまんじゅうに近い食感。ふくらし粉(ベーキングパウダー)を入れてふっくらさせたり、あえて入れずにしっとりとした食感を活かしたり、これも地域やご家庭によって様々。

蒸すタイプのおやきは現在もっともポピュラーな製法として長野県全域で広く普及しているようなので、比較的食べるチャンスは多いかもしれません。

また、昨今の大河ドラマでも有名になった真田一族のお膝元の上田市周辺では、古くからふくらし粉を使わずに蒸した、モチモチとしたなめらかな皮の食感が特徴の蒸しおやきが作られているようなので、こちらもぜひ一度お試しあれ。


この蒸しおやきで有名なのが長野市の信更という地区にある『信更いっぽ』。

焼いたおやきとはちがったふんわりとした食感を味わってみてください。


さながら焼き餃子のように焼いて蒸すおやき。

そして3つめが一旦焼いてから蒸す薄皮のタイプ。

これは冒頭でもお話したように長野市以北、善光寺平周辺で多く見られるおやきです。特徴は水分多めの薄皮で具材を包むのですが、前述したとおり水分が多いため生地がやわらかめ。蒸している間に形がくずれてしまわないように先に両面を軽く焼き固めておくわけです。


先に紹介した2つのタイプのおやきに比べると生地がやわらかく包みにくい上に一旦焼いてから蒸すため、手間も余計にかかります。でも手間をかけたぶん、ほかの2タイプとは違った個性が生まれるんです。

薄くつるっとしたなめらかな皮は、中の具材の味を引き立ててくれるので、どんな具材とも相性抜群。もちもちっとした食感もこの製法ならではの特徴です。

長野市から白馬へ向かう途中にある『食事処 味菜』で提供されているおやきはこのタイプ。道の駅おがわの敷地内に併設されているので、気軽に立ち寄ることができます。


まだまだある、独自に進化したおやき。

このほかにも、まだまだ地域で独自に進化していったおやきがあります。


たとえば長野市は中条地区で作られるベースは蒸すタイプのおやきですが、笹で包んでから蒸すことで香りが中に染み込み風味が増す上に、硬くなりにくいというメリットも。



また、そば粉や米粉を使用したおやきや、チヂミのように薄いおやき、油で揚げるなんてものまであるんです。

リゾートホテル栂池のある小谷村にも “ちゃのこ” と呼ばれる独自の進化を遂げたおやきがあります。生地に馬鈴薯(じゃがいも)を練り込み、独特の口どけと食感が絶品です。

もともと農作業の合間に手軽に食べられて、なおかつ腹持ちをよくするために馬鈴薯を錬り込んだようですが、それが個性ある美味しさを生み出しました。


現在では地域問わず、長野県ならどこでも様々な種類のおやきが楽しめます。

と、ここまで地域別としておやきの種類を紹介してきましたが、あくまでもルーツのはなし。


現在では、大昔にくらべてインフラが普及していたり、集落の外に嫁ぐことがスタンダードになり、嫁いだ先で自分の育った土地の郷土食を家庭の味として定着させたり、と様々な地域の食文化が入り交じっているので、わざわざその場所を訪れなくてもいろんな地域のローカルフードが食べられます。

もちろん、おやきも然り。

私の住む長野市でも焼き、蒸し、焼き蒸し、いろいろな種類のおやきが売られていますし、ひとつのお店で全部のタイプのおやきが並んでいるところもあるくらい。あくまでもそれぞれの製法の特徴とルーツがあることを知り、これをきっかけにおやきに興味をもってもらえたらという紹介です。


ぜひ長野に来て、いろんなおやきを食べてみてください。

馬場 裕一郎

馬場 裕一郎

長野県在住。出版社の編集を経てライターに。 自然豊かな場所で生活しているため、アウトドアやスローライフに関する記事に携わることが多いが、趣味はもっぱらマンガを読むこと、と比較的インドア派。 スマホには常時7つ以上のコミックアプリがインストールされている。

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